オススメするゼミ選択の方法


ゼミの選択基準-志先行型人間が地に足をつける日記
http://d.hatena.ne.jp/heitarosato/20100127/1264613005


現大学2年生は、新3年で所属するゼミを決めるべく、そろそろゼミの説明会やオープンゼミを通して情報を集めているようですね。友人が上で書いている内容にほぼ同意しますが、まぁ追加的に個人としての見解を。僕のいる一橋大学のゼミに限らず、慶応や早稲田でゼミ選択をする人にも参考になると思います。今の僕だったら、一年前の自分にこう言うかな、というアドバイスを数点。結果的には、「そこそこ勉強したい人」とか「就活もちゃんとやりたい人」向けになります。


1.先輩が一流企業に就職したゼミに所属しても、就活にプラスになることは特にない

先輩から外資系企業や日系有名企業(以下、あまり使いたくない言葉だが便宜的に「一流企業」とする)に行った人がいる多数いるゼミに入っても、それが就活で直接有利になることはありません。就活は情報収集みたいな面を除けば、完全に個人プレーなので。たまたま1年前〜数年前の就職実績が良かった(この「良かった」ってのもなんかなぁと思うけど)ために、それを宣伝して人を集めようとするゼミには、往々にしてあまりぱっとしない人達が集まります。そしてその年はごくありふれた就職実績になることでしょう。身近な実証例もいくつか知っていますが、個別具体的なゼミ名は名誉のために伏せておきます。つまるところ僕としては、上級生がわざわざ就職実績自慢をするゼミはあまりお勧めしません。


2.学んだことが社会で直接役立つことも多分ない

例えばマーケティングを学んだから企業のマーケティング部門で活躍できるとか、コーポレートファイナンスを学んだから投資銀行の就活に有利とか、そういうのもありません。学部レベルで学ぶビジネスの具体的知識は、しっかりした実務家が使っているそれに比べればお遊びみたいなものです。投資銀行インターン「君たちが大学で金融を2年とか学んでも、投資銀行に入って0から2ヶ月学んだ人に勝てない」と言われましたが、実際に働いている人達を見てその通りだと感じました。彼らはクライアントを前にして、成果を出さなければクビになるリスクを負いながらプロとして働いています。大学生と切羽詰まり方が全く違う。「こういう知識を学んだから、企業に入ってそれがこう役立つ」という考え方はおそらく捨てた方が得策でしょう。ゼミで身につけるもののうち社会で役立ちうるのは、あくまでものを考える際の軸となるような基礎的理論や考える手法であって、こまごました具体的知識ではありません。「大学で学ぶことなんて社会に出て役に立たない」と言いたいわけではないので注意。以下、池尾和人先生(慶応大学)のtwitterコメント。

学部時代には思考力の背骨を形成することが重要で、そのためには何でもいいから1つのdiscipline(研究分野)を系統的に学ぶことが近道。そのdisciplineが、即物的な意味で役に立つかどうかはどうでもよく、ギリシャ・ローマの古典学でもいいわけ。


3.シビア度を決める要素は課題量より「グループワークの有無」「発表頻度」

英書を週に何ページ読むのか先輩に聞いても、そのゼミがどれくらいシビア(準備が大変、拘束時間が長い)かは正確にわかりません。同じ週10ページでも、上の二つの要素によって拘束時間が全く異なるためです。例えば、発表者が事前に決められ、発表者のみレジュメを用意という形式であれば、どんなに見かけ上のページ数が多かろうとゼミとしては非常に楽(あまり勉強にならないレベル)です。僕のいるゼミのように、「毎週ランダム(先生が指名するのでなく、トランプを使うので純粋にランダム)で発表」だと、毎回発表に耐えるレジュメを作成していく必要があるので、しんどい半面よい訓練になりますね。また、グループ単位で作業を行うゼミの場合、そこから学ぶものも多いですが、拘束時間は倍近くなると思ってよいでしょう。自分は早くから就活をしたいが周りの人は就活を始めるのが遅いとか、グダグダした非生産的な議論に付き合うのが辛いというような人の場合には少ししんどいかもしれません(それでも学部生は理系院生よりよっぽど楽ですし、両立している人はいくらでもいますが)。


以上のポイントを踏まえて、僕としては次のような基準でゼミを選ぶことを強く推奨します。


●社会で役に立つ、役に立たないという観点を一度捨て、純粋に今興味がある、学びたい分野を選ぶとよい

●授業同様、先生の評判(真面目に受けている人にとって、授業が面白いかどうか)は、ゼミのテーマと同等かそれ以上に重要

●良質な議論や学習をゼミで行いたいなら、シビアなゼミを選ぶべし(一緒に学ぶゼミテンの質は、シビアさに比例して上がる)

●グループワークか個人ワークかの差は非常に大きいので、意識して区別し、来年の予定や自分の気質と相談して好きな方を選ぶべし


また、実際に勉強し始めるとイメージと違ったということも多いので、ゼミを決める前には候補となるゼミのしっかりした上級生や指導教官に、扱う分野に関するオススメの本などを聞いて、休み期間の間に読んでみるとギャップが少なくなっていいかも。余談ですが、うちのゼミで扱う内容についてのよい本も紹介しておきますね。制度設計・インセンティブ設計に興味がある人は、借りるなり買うなりして読んでみることをおすすめします。数式は出てきませんし、経済学部や商学部の人なら絶対に読んで損はしない本なので(官僚志望の法学部生とかにも読んでほしい)、他大の人も気が向いたらどうぞ

市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える

市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える") (叢書“制度を考える”)

あと、うちのゼミに興味がある人で、ビジネスエコノミクスや基礎ミクロ経済学の授業を取ったことがない人は、必須ではありませんが何か一冊くらい入門レベルのちゃんとした教科書を買って、「ゲーム理論」「不完全情報の経済学」みたいな部分を読んでおくと、学習がスムーズかもしれません。

ミクロ経済学

ミクロ経済学

その他細かい質問などはメールかコメントでください(´・ω・)<その他>

●僕のゼミ教官のtwitter発言より抜粋
「指導教員を熱狂的信奉する学生が,指導教員を超えることはありえない」

●後期ゼミナール協議会発行のゼミ紹介雑誌に載せた紹介文は僕が書いたものですが、よくある「論理的思考力が身につく」「プレゼンテーション能力が身につく」みたいなことは書かないように気を付けてます。そういうものはゼミの中で自分で考えたり工夫することで身につくもので、漠然とゼミに参加してたって身につくはずないので。また、その先生がいかに権威かみたいなのも、その権威に乗っかろうという嬉しくない学生を引き寄せてしまうので避けたり。この分野に興味があって、勉強することやしゃべること(ゼミ内での議論中心なので)が好きな下級生が入ってくれると嬉しいです。

●先生が担当授業では比較的厳しく、また商学部の他ゼミとは少し毛色の違う内容を扱っているのですが、ゼミ紹介には結構な人数が来てくれました。「不況になると学生が勉強するから嬉しい」という齋藤誠先生のコメントは正しそうです。

●ゼミが就活にプラスになることがないというのは外資系では確実ですが、日系の場合そうとも言い切れない部分があって、コネみたいなものがごくごくたまにあるようです。住友信託で微妙に優遇を受けたような、受けなかったような。まぁその場合も内定までとなると実力は必要条件ですから、そういうのに期待してゼミを選ぶことは推奨しませんが。あと○○ゼミだから入れるとか、○○部だから入れるみたいな採用活動をしている企業は、遅からず衰退するような気もする。

●これだけネットやコミュニケーションツールが発達した時代に、OB訪問は自分のサークルやゼミ、大学の先輩に頼るというのも狭い気がします。mixiでもtwitterでもなんでもいいからガンガン使って、業界問わずいろんな人に会ってみてください。kanedoは「OB訪問」というのを通常行われる形でしたことはないけど、なんだかんだで社会人さんに会うことは頻繁にしていたりします(主な目的は集まってゲームとか飲みですが)。