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オバマ米大統領、大手金融機関に対する特別税を発表
http://jp.wsj.com/US/node_22458

オバマ米大統領は「公的資金の回収を望む」と宣言し、大手銀行をはじめとする金融機関にリスク取引の割合に基づき課税する計画を発表した。

 大統領は14日、ホワイトハウスでの短時間の会見で、目標は銀行を罰するのではなく、大統領自身が「非常識」と評する新規雇用者ボーナスなど金融機関の行き過ぎた行動を防ぐことだと表明した。

特別税は6月30日から実施される見通しで、期間は最低10年。料率は0.15%で、総資産から普通株などの中核的自己資本や利益の内部留保などを差し引いた額をベースにする。

 政府高官の一人は最大手の金融機関10社からの同税の徴収額が全体の約60%を占めるとみていることを明らかにした。 


金融危機責任手数料」だそうです。なるほど。もちろんこの計画の背後には、「今回の金融危機の原因を作ったのは銀行なのだから、やつらに責任を取らせろ」という、有権者の素朴な気持ちに訴えかける目的があるのは理解できます。どの国でも政治とは感情的なものなのでしょう。日本はいくらなんでもひどいと思いますが(´・ω・)


また、特定の相手にターゲットを絞って、取りやすい所から税金を取るのも珍しいことではないので(たばこ税増税とかもそうですね)、別にこういう形で税金を取ること自体については、賛成も反対もしません(´・ω・)


ただ、ここで気になるのは、この税金の正当性と平等性です。金融危機責任手数料と呼ぶなら、金融危機を引き起こしたことに責任がある人々に対して、その責任量に応じて負担をしてもらうのが筋だと思いますが、この見方に基づくと、おかしい点が二つあります(´・ω・)


一点目は、バブルはみんなが作り出すものなのに、なぜ銀行にだけ課税がなされるのかなということ。問題の金融商品を作りだした銀行や住宅ローン貸出を行った金融機関以外にも、いいかげんな仕事をした格付け機関、自ら判断せず格付けを盲信した投資家、不適切な報酬体系によってモラルハザードを起こしたファンドマネージャー、過激な金融緩和によってバブルの起こる下地を作った日米の政府や中央銀行、低金利による収益増を自らの実力と勘違いして不相応な規模拡大に走った事業会社の経営陣、みんなが実際にはバブル発生に対する責任を追っているとかねどーは考えています。とりわけ政府が自分達の過去の行動を棚に上げて「正義」の側に立ち、銀行経営陣の高報酬等をセンセーショナルに取り上げて叩くのはずいぶん無責任な話ではないでしょうか(´・ω・)


二点目は、百歩譲って金融危機の責任が金融機関にあるとしても、「総資産から普通株などの中核的自己資本や利益の内部留保などを差し引いた額をベースにする」という課税額の算出方法が、金融機関の責任と対応していないこと。この方法だと、業態や経営の内容、金融危機発生に対する責任と関係なく、総資産額がたくさんある所ほど多くの額を支払うことになるでしょう。これでは「大衆のガス抜きついでに、取りやすいところから税金取っただけ」と言われても仕方がない。自由も平等も正当性もありません(´・ω・)


まぁでも、なんだかんだ言ってこの課税は通るでしょうし、これができるのは、代わるものの無い巨大市場を持つアメリカだからですね。日本がやったらおそらく一斉撤退されて、アジアにおける金融の中心はますます香港やシンガポールに移るでしょう。外資系就活生涙目(´・ω・)