経済系のオススメ本(中級,しばらく随時更新)

※この記事はちょっとずつ更新していこうと思います


こんばんは(´・ω・)

半年ほど前に、こんな記事でおすすめの本をいくつか紹介しました(´・ω・)
http://d.hatena.ne.jp/kanedo/20081128/1227877512


大学3年生になってメールをやりとりする機会が増えたためか、最近は大学関係の友人や知り合い(一橋、他大問わず)に当ブログの読者が増えているみたいです。今回は、そういうちょっと経済学や経営学をかじった人向けに、僕の好きな本を紹介したいと思います。ハードカバーのちょっと高い本が中心になるので、まず図書館でチェックして、面白そうだと思ったら借りてみるとよいかもしれません。ちなみに数式はどの本にもほとんど出てきません(´・ω・)


市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える

市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える") (叢書“制度を考える”)

市場は相反する意見を生み出している。ある人々は市場を搾取と貧困の源だと非難する。他の人々は自由と繁栄の源であると称賛する…(中略)あらゆる種類の社会病理に繰り返し提示されてきた2つの単純で直接的な解決方法―「市場を抑制する」と「すべてを市場に任せる」―は、たいていの場合間違ったものである(p.18)

この本のテーマは「市場をうまく働かせるための制度設計」です。

市場経済は、うまく機能すれば他のどんな経済体制よりも我々に便益をもたらす可能性がありますが、素朴な自由放任ではうまくいかないことがあります。市場がうまく機能するには、
・情報がスムーズに流れている
・人々が約束を守るという信頼がある
・財産権が保護されている
・競争が促進されている
・経済活動の第三者に対する副作用が抑制されている
といった条件が不可欠で、これらは基本的にほっとけば勝手に満たされるようなもので性質ではありません。政府等のルールを制定する権力は、条件がうまく満たされるように経済制度を設計する必要があります。

本書は、まず「市場」とは何者で、どんな特徴を持つのか、どうして市場経済でないとダメなのかといった市場に関する基本的論点から始まり、有効な制度設計のために必要な経済学的知識をやさしく書いています。ちなみにKanedoの専攻はこの分野。


資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

このように市場があまりにうまくやってのけることが、自由経済への反対論の主な根拠であるらしい。市場経済は、政府その他の集団が「大衆はこれを望むべきだ」と考えるものではなく、一人ひとりが実際に望むものを与える。市場反対論者の心の奥底には、こうした自由そのものに対する懐疑の念が潜んでいるのだろう(p.49)

「各個人は、他の人がそうするのを妨げない限りで、自分の能力や資産を好きなように使うことを最大限認められるべきである」という自由主義の立場に立って、それを徹底的に突き詰めながら経済のあらゆる分野にわたる政策提案を行っている本です。「なぜ国営でなく民営化すべきなのか」「なぜ小さな(というより、単純な)政府にすべきなのか」が明確なロジックで語られています。

この本の凄い所は、合理的な極論であるがゆえに、50年前の本でありながらいまだに全ての経済的、社会的問題を考える時のスタート地点となりうること、そして、経済書であると同時に魅力的な思想書であることでしょう。市場経済に多かれ少なかれ疑問を持ってる人が読めば、疑問点がよりはっきりするとともにある種の誤解が解かれると思います。


儲けている投資家に、なんでそんなに成功しているんですかと聞いてみればいい。そんな結果になったのはなぜか、説得力のある掘り下げた説明をしてくれるだろう。そういった間違って説明をするのはおうおうにしてわざとで、むしろ「インチキ」と呼んだ方がふさわしい(p.9)

この本のテーマは、不確実性と、不確実性に対する人間の(いい加減な)理解といったところでしょうか。我々がいかにして運を能力と、偶然を必然と、憶測を知識と、主観的確率と客観的確率と勘違いしてしまうか、そして不確実性について「わかったつもり」でいることの危険性について書かれています。今回の金融危機もある意味「わかったつもり」でいた不確実性が牙をむいた結果と考えられるでしょう。歴史や科学哲学の話が続出し、決して簡単に読める本ではありませんが、自分への強い戒めになる良書です。


ゲーム理論で勝つ経営 競争と協調のコーペティション戦略 日経ビジネス人文庫

ゲーム理論で勝つ経営 競争と協調のコーペティション戦略 日経ビジネス人文庫

ビジネスは「パイ」を作り出す時には協力し、その「パイ」を分ける時には競争するものなのだ。換言すれば、ビジネスは「戦争と平和」である。しかし、それはトルストイ―際限のない戦争と平和の繰り返し―ではない。戦争と平和が同時に起こるのである。

http://d.hatena.ne.jp/kanedo/20081206/1228502609

昔の記事でも少し触れましたが、ビジネスにおける「競争」と「協調」の側面を、豊富な実例とゲーム理論のツールを使って分析している本です。ゲームはプレイヤー、付加価値、ルール、戦術、範囲という要素から構成され、一つの変化がゲーム全体の結果を大きく変える可能性があります。この本を読むことで教科書的に経営戦略を学べるだけでなく、自分で状況を分析し、戦略を立て、「自分に有利なゲーム」を構築するための基本的なツールキットを手に入れることができるでしょう。