売春や児童ポルノを巡る論点1

<基本的立場>
1.売春は合法化し、免許制等で国が管理するのが、利用者にとってだけでなく、売春防止法が守ろうとしている人々や国家財政にとっても有益である。しかし現実には、大衆だけでなく、規制によって超過利益を得ている当事者集団も反対するため、改正は難しい(´・ω・)

2.児童ポルノについては、18歳という基準年齢が適切かは議論の余地があるものの、単純所持も含めて処罰の対象にすべきだ。他のポルノ、あるいはゲームや絵については処罰対象とすべきでない(´・ω・)
※長くなりすぎるのでこちらは違う機会に回す。<本文>
まず、「売春」そのものは刑事処罰の対象とならないことから確認しておきたい。日本にあるのは「売春禁止法」でなく、「売春防止法」である。売春に関係する事柄で刑事処罰の対象となるのは以下の通りだ。「青少年保護育成条例」の類については思う所もあるが、別の問題なのでやはり違う機会に回すこととしよう。

1. 売春勧誘(同法5条1号)
2. 売春の周旋(同法6条1項)
3. 売春をさせる契約(同法10条1項)
4. 売春をさせる業(同法12条。俗にいう「管理売春」は、これに含まれる。)

このことから分かるように、売春防止法が根絶しようとしているのは組織的な売春である。すなわち借金等をたてに女性の自由を奪い、ヤクザの懐を豊かにするそれだ。これが不健全であり、根絶すべきであることについては私も同意する。問題は、同法がザルであることとその根本的理由である(´・ω・)


私の立場として、売春に莫大な需要がある限りこれを根絶することはできない。根絶しようとすればするほど、需要の受け皿は監視の目が届かない場所か外国に流れるだけである。そして風俗嬢が法律の保護をろくに受けられず、半無法地帯で組織に対して弱い立場に置かれることとなるのは、売春を「ないもの」として扱う警察の責任である(´・ω・)


規制強化によって、決まった場所を持たないデリヘルという業態が生まれたが、風俗嬢が一対一で客と接しなければならなくなり、より危険に晒されるようになった。また、東南アジア等への「売春ツアー」は、日本よりはるかに深刻な少女への人権侵害を行っている現地業者を支えている。弱者を守るためだった規制が、本来守るべき者を逆に追い詰めている構造を改善せよ(´・ω・)


売春は店を免許制にし、正確な会計報告と納税、定期的な性病検査を義務付けた上で、認可を受けていない組織売春については関わる者すべてを取り締まることを提案する。風俗嬢は法律のもと組織と対等に交渉できる存在となり、また不当な水準の中間搾取を阻止することは、消費者と風俗嬢の双方にとって金銭的メリットとなる。税金や検査はコストとなるのでアンダーグラウンドなものより高くなるだろうが、「多少高いが性病のリスクが低く、合法の売春」が存在すれば、「安いが、性病のリスクが高く、違法な売春」の存続(消費者と従事者の確保)は自ずと前より困難になるだろう。加藤鷹がAVを「日のあたる世界」に引きあげたように、売春も社会の一部として認められるべきである(´・ω・)


しかし、実現は言うほど簡単ではない。社会を構成する大衆は、売春と真正面から向き合うこともできないほどに蒙昧である。意識的であるないにかかわらず、平均的な人々が自らの性権力を保護するには、「愛」という神話を共有し、その正当性を脅かす「魔女」を日陰に追いやることが必要なのだ。売春が不健全であることによって恩恵を得ている人間が相当数いる構造には注意せねばなるまい。多くの経済的問題と同様、この問題において「私はやらないけど、したい人はすればいい」というリベラリズムの論理は、既得権益の保護に屈してきたし、これからも屈し続けるかもしれない(´・ω・)


達成の障害となるのは大衆ばかりではない。このデータを見る限り(http://simple-u.jp/pdone.php?id=606)、風俗嬢は誰もが高給というわけでもないようだが、中には大金を稼いでいる女性もいる。そうした女性の高い収入が一部「アンダーグラウンドであることによる追加収入/参入障壁」に起因すると考えて不自然ではない。となると、売春が公然と認められれば「弱い売春婦」の労働環境が改善されると同時に、「強い売春婦」の収入が減ることとなるので、後者にあたる女性達は反対することが予想される。また言うまでもなく、この「健全化」は現在の売春組織にとって死活問題である。ヤクザと繋がった一部の組織が、あらゆる手段で阻止を試みるに違いない(´・ω・)


私がこのような提案をすることで、現状が改善されるとは思わない。共感のはてなスターが1つ2つ付けば満足である。これからも警察はヤクザの収入源を黙認し、性産業に従事する女性が「魔女狩り」に遭い、一段階思考的な女性保護論や「政治的に作られた美徳」がその腐敗を温存するだろう。こうした話題が少なくとも議論の対象になるような論壇が、ネットの世界から生まれることを願う(´・ω・)


関連:結婚制度ってどうよ
http://d.hatena.ne.jp/kanedo/20081111/1226330004