経済学の入門書(中高生、非経済学部生向け)

昨日は、普段300アクセス/日程度でひっそりやっているこのブログに、10000アクセス/日を超えるアクセスがありました。このブログを今後数カ月どんな感じでやっていくかについてちょうど考えていた所で、意図せずして一つの方向性を試すことになったわけです(意図的な「仕掛け」ではなく、偶発事故でした。ネットすげぇ)。結果としては、センセーショナルな記事を書いて注目を集めるのではなく、今まで通り考えることや勉強が好きな学生さん等を仮想読者としてひっそりとやっている方が僕の性に合っているという結論に至りました。新学期が近づいたらちゃんと大学新入生向けまとめ記事を書きますが、もしそういう学生さんが新しく訪れていてくれたら、ぜひ過去の記事も見てみてください。僕がどういう文脈で、後輩に何を言おうとしてあの記事を書いていたのかがわかるかと思います。


さて、昨日の記事について、文中で使われている考え方(思想でなく、分析手法)が面白いな、と思った方のために、経済学のオススメ書籍をご紹介したいと思います。どこでも紹介されているような極めて有名な本を中心にセレクトしていますので、図書館や本屋などですぐ見つかると思います。法学部や文学部の方、理系の方、中高生の方、「まずはこの一冊」からぜひ手に取ってみてください。経済学をかじると色々な分野についての議論に首を突っ込むための下地ができます(´・ω・)

あと、経済学について既に詳しい方は、せっかく人が集まったところなので、コメント欄でオススメの経済書を紹介してくださると、多分みんなのためになるのでよろしくお願いします(´・ω・)


まずはこの一冊

マンキュー入門経済学

マンキュー入門経済学

「経済学ではこのように考える」というのがわかる、非常に良い入門書です(経済学部の新入生向けとしては物足りないですが)。このような良質の入門書をじっくり読むことで、経済学の考え方や言葉の使い方を一通り押さえることができるので、経済に関する膨大な数の本が新しく読んで理解できるようになります。入ったことのなかった大学図書館が宝の山になります。中高生でも十分読めますので、ぜひ一家に一冊。類書としては、「スティグリッツ入門経済学」も良書。


また、「経済学の考え方」「経営学との違い」といった点については、以下のエッセイも参考になります。ミクロ経済学のオススメ書籍も充実していますので、興味のある方は是非。ミクロ経済学に関するブックガイドも充実。

商学部生への経済学のススメ
http://obata.misc.hit-u.ac.jp/~itoh/ronso0404.html

経済学を定義する際には,研究対象よりも研究の際のアプローチの仕方・思考様式に注目した方がわかりやすいと思います.経済学というのはそれ自体,人間の行動に関する科学であり,人間の行動の分析に際して特定のアプローチをとる学問なのです.この点で対比されるべきなのは社会学や心理学で,社会学や心理学はそれぞれ異なるアプローチで人間行動を分析する学問です.これらの学問は,欧米の大学ではディシプリン (discipline) と呼ばれています.

まとめ:商学部生が経済学を勉強する理由は?

1.経営学商学は主に研究対象に関して定義されています.商学部の新入生の皆さんは,大学の4年間の間には自分が専門とする対象 (戦略とかマーケとか人事とか金融とか) をはっきりと持つと同時に,自分の分析アプローチの仕方・思考様式を意識して習得してほしいと思います.経済学はそのような思考様式のひとつです.

2.論理的思考の訓練のために.学生時代に重要なことは,一見すぐに役立ちそうな知識の習得やビジネスのまねごとの経験ではなく,応用範囲が広く影響力の大きいひとつの理論体系に絞り深く勉強することによって,「なぜ」という問いを突き詰めていくための首尾一貫した「ものの見方」を身につけることだと考えています.特定の (優れた) 理論体系に絞り集中的に学ぶことによって,逆に応用の地平線が広がります.経済学は,厳密な論理的思考の訓練のために格好の学問であるといえます.

3.商学部生にとって,マネジメントのさまざまな職能・機能を理解することは当然重要です.そのためのカギは,少なくともグローバルには,経済学を理解することにあります.

4.現代の経済学を大きく変えたゲーム理論は,応用範囲の広いグローバル・スタンダードな理論です.組織に対して経済学的にアプローチするための基本にもなります.


一般向けに書かれた、経済学の良書

経済学者が書いた一般向けの本で、気楽に読める軽いものをいくつかセレクトしてみました。

ご存じ竹中先生の本。貨幣、税金、投資といったニュースによく出てくるようなテーマを題材にしながら、「これは、そもそもこういうことなんだよ」という解説をしています。良書。


ヤバい経済学 [増補改訂版]

ヤバい経済学 [増補改訂版]

不動産広告の「環境良好」の隠された意味って?
90年代のアメリカで犯罪が激減したのはなぜ?
勉強ができる子の親ってどんな人?
銃とプール、危ないのはどっち?
力士は八百長なんてしない?
学校の先生はインチキなんてしない?
ヤクの売人がママと住んでるのはなぜ?
出会い系サイトの自己紹介はウソ?

「経済学的な考え方は、景気や政策、ビジネスを語る時だけでなく、色々な問題を分析する時に使えるよ」というのを示してくれている本です。前の記事でやった「就活の経済分析(超簡易版)」は素人の仕事ですが、専門の経済学者が行った分析を見てみてください。同じようなコンセプトで書かれた類書もたくさんあります。


ベッカー教授、ポズナー判事のブログで学ぶ経済学

ベッカー教授、ポズナー判事のブログで学ぶ経済学

上の本と近いスタンスで、もう少し政策に関わる問題についての入門的な本を読んでみたければ、こちらはどうでしょう。例えば政治的自由と経済的自由、移民政策、自然災害や疫病とその対策、人口増加、年金、知的所有権といった話題を扱っています。


戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する (中公新書)

戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する (中公新書)

僕が中心的に勉強している分野について、新書一冊でまとまっています。上の2冊に比べるとほんの少し堅いですが、難解ではありません。自分の行動に対する相手の反応や、全体の構造を考慮に入れて、結果を先読みしながら自分の行動を選ぶ「戦略的思考」の考え方について学びたい方、かねどーがブログで使っているような手法に興味がある方は是非。


日本経済に関する本

経済学の立場から日本の現状を分析した本達です。どれも良書ではありますが、僕の嗜好を反映して、市場の働きを重視する「伝統的」な経済学のスタンスから書いている本が中心ですので、バランスが悪いと思う方は他の方の書評等参考にしながら、そうでない立場の本も読んでみてください。クルーグマンスティグリッツの一般向け書籍(彼らの本も市場経済そのものを否定しているわけではなく、現代アメリカやIMFのスタンスを否定しているのですが)はオススメです。

バカヤロー経済学 (晋遊舎新書 5)

バカヤロー経済学 (晋遊舎新書 5)

希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学

希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学


ちょっと難しいけど、ためになる本

こちらの記事をどうぞ。難しいと言っても数学がたくさん出てくるのではなく、著者の論理を追うのがちょっとホネといったところです。元気な時にチャレンジしてみてください。


それではまた(´・ω・)