読書そのものに対する雑感

いわゆる「ビジネス本」を大学1年や2年のうちから読み漁っている大学生が最近周りにも結構多いように感じますが、かねどーとしてはあまりお勧めしません。なぜならそれは、ドラクエ3で言うとアリアハン(最初の街)のまわりで何十時間もレベル上げをするようなものだからです。自身の知的成長に投資できる貴重な時間を、効率の悪い方法で浪費しています(もちろん、漫画と同様の娯楽と割り切るならいいのですが…)。まともな勉強(大学の講義という意味ではないですが)をしている学生と、2年半の間に大きな差がつくでしょう。このような傾向は、僕の見る限り読書数を自慢するような学生には特にあてはまる気がします。あまり人のことは言えませんけどね(´・ω・)


ビジネス本や多くの新書は基本的に、広範な層の時間のない読者を対象とした本であり、多くの場合は誰でもすぐ理解したり「感動」できるようなことが簡潔に書かれています。時間も知的能力もある大学生は、もう少し難しい本を頷いたり唸ったりしながら読んだ方が、例え自分の楽しみのためにやっているとしても結果的には成長につながるでしょう。しっかりした本1冊読む間にビジネス本なら5冊読めますが、後に残るものは前者のほうが恐らく多い。かねどーの場合は興味として「人間の活動と、その背後にある個人的なインセンティブ」が大きなテーマになっているので、経済学、社会学政治学といった社会科学系や現代思想等が中心ですが、テーマは個人の興味に基づいていれば何でもいいでしょう。何かかなり深いところまで体系的な知識を持ち、必要に応じて借り物でなく自分の意見を出せるような「考えるための軸」となる分野をいくつか持っていると、様々な知的活動にとって非常に有意義です。学生証を手に入れた瞬間から大学図書館等を活用し、すでに高い評価を受けていて、読み応えのある本を中心にセレクトすることをオススメします(´・ω・)


※一応ビジネス書について多少擁護すると、自分が今まで使っていなかったツールを知ることで、生活が便利になるような効果は期待できます(知的にどうというのとは別の話ですが)。かねどーの場合、gmailfirefoxはそれですね。また一時的にモチベーションを上げる効果もあると思うので、「なんか何もしたくないなー…」という気分の時は前向きな本を読むのもいいと思います。


良い本を探すに当たっては、例えば下のようなwebサイトが参考になると思います。「『この人はいい/凄い』と思う人が、高く評価している本を読む」というのはとても良い方法ですが、その際には「この人には、紹介している本を高く評価するインセンティブが働いていないか?」と考えてみてください。例えば、書評で生活している人とか、自分が本を出している出版社の本を献本された人とか、たくさん読書しましょう!という本を執筆している人の推奨は、ちょっと疑った方がいいかもしれません。大学生の間でのちょっとしたビジネス書ブームは、就活に対する大学生の危機感につけこんで、売り手側が対象とするセグメントを「ビジネスマン」から「ビジネスマン+『意識の高い』大学生」にうまく広げたために起こっているように、若干斜めから見てる僕には感じられます。「『中流』から『下流』に落ちそうになっている、と主観的に感じている層」というのは、おそらくビジネスの対象として魅力的(ex.あまり「偉くない」ビジネスマン、30代女性)ですが、今回の不況を受けて就活中の大学生もそういう層になったのでしょうか(´・ω・)

http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2008/04/100_0953.html


1時間半で読める本もあれば、2週間かけないと吸収できない本もあるわけです。読書を数で測ることは、難しい本を適当に読み飛ばして理解した気になるインセンティブを与えます。大学生、特に大学1〜2年生は時間あるんだから、読書数なんて気にせずめんどくせー本をゆっくり読めばいいじゃないですか。一部過去の自分批判でもありますが(´・ω・)


補足:その他かねどーの極めて個人的な読書の仕方について<通学の時間を使って読む>
大学まで片道1時間くらいあるので、読書の時間にあてるのにいい感じです。<分野を決めて本へ、というのが多い>
アフリカについて読みたいなぁ、とか、民主主義の歴史的展開について読みたいなぁとかなんとなく思ったら、その分野で「名著」とされる本を探して借り、図書館で借りて読む。そこから、関連する本(本文中で言及されている学者の本とか、現代アフリカ地誌→植民地経済史とか)へと移ってネットワークを広げるという読み方が好きです。かねどーの考える良書は、その分野に興味を持つきっかけになる(ネットワークの拠点となる)ような本ですな。例えば政治学や西洋近代思想に関しては、この本が僕にとっての拠点でした。

思想としての“共和国”―日本のデモクラシーのために

<近いうち読みたい本に目星はつけるが、「積ん読」はできるだけしない>
次の本、次の次の本と決まってると、どうしても今の本を読むのが駆け足になってしまって集中できないので。<途中でやめたり飛ばして読んだりする>
読むのに飽きたらやめるし(また読み直すこともしばしば)この章はあんまり興味ないなーと思ったら興味ある章だけ読んだりも結構します。「その本や分野に気が向いてる時」とそうでない時では吸収力に3倍は差があるように感じるので、その瞬間瞬間に読みたい本を読むというのが原則。まれに2〜3冊同時並行で読みます。